2017年8月12日土曜日

中国江南紀行2015(9)杭州

平成27年12月29日(火)午後 杭州

紹興市内で昼食をとったあと、私たちは再びバスで杭州に向かった。
途中の高速道路は順調だったが、杭州市街地に入り一般道に降りると渋滞がひどくなり、バスは思うように先に進まなくなった。
翌年(平成28年)9月のG20開催に向けて、街のあちこちで新しいビルや道路が建設中で、まるで街全体が工事現場のよう。大きな鉄管を積んだトレーラーや、土砂を満載したダンプカーなどの工事用車両がひっきりなしに行きかい、渋滞に拍車をかけていた。

冬の日が暮れるのは早い。これから西湖、六和塔を観光するのに、日が暮れてしまったら景色が見えなくなってしまう。

時計は3時を回った。
西湖まであと少し。気が焦るばかりだが、バスは渋滞の中、のろのろと進んでいく。

西湖近くでは観光地渋滞に巻き込まれた。
目の前で足踏みをして、ようやく西湖についたのが、4時近く。
もうすぐ日が沈んでしまう。

バスを降り、北宋の詩人、蘇東坡が杭州知事として赴任していたときに築いた蘇堤にある船着場から小さな遊覧船に乗り、西湖を周遊した。

雷峰山山頂に立つ雷峰塔と湖に浮かぶ舟。まるで中国山水画の世界。
雷峰塔は975年に創建されたが1924年に倒壊し、現在の塔は2002年に再建された。
塔は新しくても、とてもいい雰囲気を出している。


こちらは高層ビル群を背景に湖に浮かぶ遊覧船。
いかにも現代的な景色。


私たちが乗ったのと同じタイプの遊覧船。

紹興から西湖までの道のりは長かったが、かえってそれがよかった。
おかげで夕陽に映える西湖を見ることができた。




年が明けた平成28年。西湖の景色を描いた二つの日本画に偶然めぐり会える機会があった。
一つは、杭州から帰国して2週間後の1月9日、京の冬の旅で特別公開されていた京都・真如寺で見た江戸時代後期の絵師、原在中の襖絵「西湖図」。
もう一つが、5月に出光美術館「美の祝典Ⅱ」に展示されていた、狩野派の基礎を築いた室町時代の絵師、狩野元信の「西湖図屏風」。

西湖は室町時代や江戸時代の絵師たちにとってあこがれの地であった。
当時の絵師たちは現地を見ることはできず、想像で描いたのだが、それでも実際に西湖に行ったときのことを思い出させてくれるとても素晴らしい作品だった。

次に私たち一行は六和塔に向かった。
もうすぐ5時。あたりはだいぶ暗くなってきた。
六和塔は北宋時代の970年に創建されたが、その後の兵乱で破壊され、南宋時代の1156年に再建された。

六和塔

一番上まで行くにはらせん状の階段を延々と昇らなくてはならないので、かなりの重労働。

それでも、壁にところどころ鮮やかに残っている再建当時の壁画が目を楽しませてくれる。

一番上まで昇り外を見ると、あたりはまだ明るさが残っていて、銭塘江の暮れなごむ夕景が目の前に広がっていた。

この日の観光を終え、六和塔近くのレストランで夕食。
とても充実した中国江南地方の旅を終えて満足した気分に浸りながら西湖ビールで乾杯!


平成27年12月30日(水)杭州

この日はホテルから空港に直行して帰国するだけ。

空港に着き、何かお土産を買おうかなと思いながら空港内の売店コーナーを歩いていると、さすが龍井(ロンジン)茶で有名な杭州だけあってお茶を売る店があって、きき茶のコーナーもあった。


お店の女性はお茶の入れ方を説明しながらお茶を入れていく。
こちらはその手際の良さに感心しながら、入れたての龍井茶をいただく。
いつもはあわただしい空港でこんなにくつろいだ気分になれるとは思わなかった。

このお店には龍井茶のミニチュア缶(高さ6cmぐらい)があったので、お土産にいくつか購入した。


気候温暖、風光明媚、古来から作物が豊かに実り、交易で経済も発展し、文化の華が開いた江南地方。
冬でも暖かな陽気がとても心地よい。
近いうちにまた年末にふらりと訪れてみたい、と思いながら帰国の飛行機に乗り込んだ。

(「中国江南紀行2015」おわり)

【次回予告】
 次回からは昨年8月に行ってきた唐の都・西安、秦の始皇帝の兵馬俑の様子を紹介します。ご期待ください。