2017年5月30日火曜日

中国江南紀行2015(6)上海博物館

平成27年12月27日(日)上海博物館

上海博物館の中国絵画のコーナーでは、近代画家で、美術品の蒐集家、鑑定家でもあった呉湖帆(ごこはん)(1894-1968)のコレクション展が開催されていた。



五代の董源に始まって近代の呉湖帆自身の作品まで、年代順にハイレベルな名品がずらりと展示されている。
(上海博物館は1年前にも行ったので、その時の様子はこちらをご参照ください。また、王朝順に代表的な作品を紹介していますので、1年前と重複する作品もありますがご了承ください。)

   中国江南・上海紀行(7)上海博物館

   中国江南・上海紀行(8)上海博物館続き

最初は五代南唐(937-975)の董源(とうげん)「夏山図巻」。
江南地方で活躍して「南に董巨(董源と巨然)あり」と言われた董源。江南地方ののどかな自然の雰囲気がよく描かれている3メートル以上の絵巻。
五代 董源 夏山図巻(部分)
続いて北宋中期の画家・郭煕(かくき)「幽谷図軸」。
こちらは平成25年に東京国立博物館で開催された特別展「上海博物館~中国絵画の至宝」で来日した作品。昨年台北故宮博物院で見た郭煕の「早春図」と同じく巨大な障壁画の一部の可能性も指摘されている(同特別展図録より)。


北宋 郭煕 幽谷図軸
こちらは彫版印刷が発達した南宋の宋伯仁(そうはくじん)「梅花喜神譜」。
この双桂堂刊本は宋伯仁が編集したもので、中国最初の木版図譜である、と解説にある。
南宋 宋伯仁 梅花喜神譜冊
元代に移って展示されていたのは呉鎮(ごちん)「漁夫図巻」。
こちらも董源「夏山図巻」と同じく前回に引き続き今回も展示されていた逸品。

元 呉鎮 漁夫図巻 (部分)
ゆるキャラの漁夫のおじさんに再会!
元 呉鎮 漁夫図巻(部分)

気持ちよさそうに居眠りをする漁夫も。
元 呉鎮 漁夫図巻(部分)
明代に入って仇英(きゅうえい)、沈周(しんしゅう)、董其昌(とうきしょう)と続く。
まだ現物をみたことがない仇英の「清明上河図」(台北國立故宮博物院)のように色彩がとても鮮やか。
明 仇英 倣古人物図冊

呉派文人画の代表格、沈周「西山紀遊図巻」。
明 沈周 西山紀遊図巻(部分)
橋を渡る高士はどこへ行くのか?
明 沈周 西山紀遊図巻(部分)
険しい峠を越えて、
明 沈周 西山紀遊図巻(部分)

船に乗り、
明 沈周 西山紀遊図巻(部分)
 高士の行きつく先は海に突き出た岬にあるお寺のような建物か?
明 沈周 西山紀遊図巻(部分)
あっ、さきほどの高士は東屋の下で佇んでいた!

明 沈周 苔石図軸

続いて明末の董其昌。
上海から帰ってきた後も、今年初めに東京国立博物館と台東区立書道博物館の連携企画「董其昌とその時代」が開催され、両館に前期後期とも行って、董其昌とその時代の素晴らしい書画を存分に鑑賞することができた。
明 董其昌 画禅室小景図冊

清初の代表は、董其昌の影響を受けた「四王」の一人、王時敏(おうじびん)。
古(いにし)えに倣いつつも独自の雰囲気を出している山水図。
清 王時敏 倣古山水図冊
そして最後に呉湖帆の作品。
青緑山水を描いた呉湖帆も、
呉湖帆 倣燕文貴渓山楼視図軸(1935)
董其昌や「四王」の流れを汲む優雅な山水画を描いていた。

呉湖帆 湖山秋色図軸(1932)

呉湖帆 梅景書屋図軸(1929)
蘇州に生まれ、上海で活躍した呉湖帆。
故宮博物院のように強大な権力をもった皇帝の後ろ盾があった訳ではないのに豊富な中国絵画のコレクションを誇る上海博物館で今でも中国絵画の名品を見ることができるのは、中国絵画の良さを見出し、大切に蒐集・保存した呉湖帆の並々ならぬ努力があったからであろう。
呉湖帆さんに感謝。
(次回に続く)